免疫ストレスを取り去る食べ方

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免疫ストレスはこちらで紹介しました。最近、注目の食品は大麦のβ-グルカンです。

現代人は、注目のβ-グルカンの摂取量が減少している

免疫力アップ効果に注目が集まる、β-グルカンという成分を耳にした人も多いと思います。このβ-グルカンは細胞壁に含まれる多糖類の一種で、水溶性食物繊維に分類され、大麦やキノコ類に多く含まれています。

近年、β-グルカンについてはさまざまな効能、効果が確認されています。たとえば、免疫系を活性化して感染抵抗力を強める効果や、慢性の炎症を抑制する効果などが報告されており、アメリカ食品医薬品局(FDA)と欧州食品安全機関(EFSA)は、大麦食品についてコレステロールを低下させる因子として、「ヘルスクレーム(健康強調表示)」を認可しています。

大麦β-グルカンには、ほかにも血糖値の上昇抑制作用、血圧降下作用があることが明らかになっています。

FDAのヘルスクレームによれば、効果のある摂取量はl 日3グラムとなっています。発芽大麦であれば100グラム強に相当する量です。

ここで昭和30年の農林水産省(当時は農林省)の作物統計では、日本の大麦生産量は240万トンで、平均摂取量は1年に1人あたり24キロも消費していたことになります。
したがって、大麦のβ-グルカン含有量を3%とすれば、1日あたり約2グラムを大麦から摂取していたと考えられます。現在はどうでしょう。国内で生産される主食用の大麦は約20万トン前後と昭和30年当時の10分の1以下にまで低下しています。

キノコ類など大麦以外からも摂れるので、現代人の摂取量が10分の1以下になったというのは少し過大評価かもしれませんが、β-グルカンの摂取量も同様に低下しているようです。

水溶性β-グルカンは、胃や小腸で消化酵素の影響を受けず、水溶性の状態では高い粘性があることから、胃粘膜の保護作用、小腸内を通過するときに糖質や脂質の吸収を抑制する作用、有害物質を吸着して体外に排出する作用なども知られています。

腸の「免疫ストレス」を取り除くβ-グルカンの効果は、今後の研究によってさらに明らかにされるでしょう。

快眠できない人のために大麦発酵酵素を使用した「快眠すっきり酵素」などもあります。現代人に眠れない睡眠トラブルが増加しているのもこのβ-グルカンの摂取量が大きく減少しているからかもしれません。

免疫力アップには欠かせないグルタミン

腸の免疫力アップには、β-グルカン以外にグルタミンという栄養素も欠かせません。グルタミンとグルタミン酸は、よく混同されがちですがどちらも人体に欠かせない必須アミノ酸ではあるものの、異なる物質です。

グルタミンは骨や筋肉を作るなど、たんばく代謝や免疫機能にとって重要な栄養素ですが、実は腸にとっても重要な栄養素なのです。
グルタミンは小腸粘膜細胞にとって最大のエネルギー源で、大腸粘膜細胞にとっても2番目のエネルギー源です。さらに、小腸の粘膜の修復や、粘膜細胞のはたらきを高め吸収を促す作用、リンパ球の栄養になるなど、腸の免疫作用にとって不可欠の栄養素といえます。
通常、グルタミンのほとんどは体内で合成され、食事で摂取される量は、体内で消費される量に比べてはるかに少ないものです。そのため、本来グルタミンを意識的に補充する必要はないといえます。

ただし、病気や激しい運動などで体が深刻なダメージを受けたりした場合、各臓器に供給するために筋肉から大量にアミノ酸が消費されることになります。
そのひとつがグルタミンです。このような事態になると、グルタミンが不足してしまいます。とくにグルタミンは、分裂スピードの速い腸細胞のエネルギー源として大量に消費されるので、このような状況下ではとくに補給が必要になります。

腸壁にある免疫細胞のなかでも、とくにマクロファージやリンパ球にとってグルタミンは重要なエネルギー源でもあるので、感染症などに対抗する際には、さらに多くのグルタミンが消費されます。フランス人は、風邪で体力が落ちてしまったとき、生肉や生卵を使った料理である「タルタルステーキ」を食べる習慣があります。肉や魚、卵に多く含まれ、熱に弱いグルタミンは、生の状態で摂ることが有効であることを、彼らは経験的に知っているのかもしれません。

体内で消費されるグルタミンのほとんどは体内で合成されるものなので、どんなときに、どれくらいの量のグルタミンを摂取すれば有効なのかについては、はっきりとしたことはわかっていません。しかしフランス人の例からもグルタミンの摂取と免疫力のアップには深い関係性があります。

グルタミンを効率的に摂取するなら発芽大麦がおすすめです。この発芽大麦はグルタミンのみならず、ビタミンや食物繊維、ミネラル、β-グルカンなどさまざまな栄養素を豊富に含んでいます。あるいは青魚の刺身や、生卵での卵かけご飯などを食べるの効果的です。

グルタミン酸は腸に欠かせない栄養素

グルタミンは、グルタミン酸と混同されやすいのですが、腸の免疫力アップに欠かせない大切な物質です。日本人が「うまい」と感じるもの。その「旨味」とは、鰹節や昆布、干しシイタだしじるケなどでとられた「出汁」によるものです。

この出汁こそが、和食を特徴づけるひとつの要素だといえるでしょう。この旨味のもとは、出汁に多く含まれているグルタミン酸です。実はこのグルタミン酸は、私たちにおいしさを与えてくれるだけではなく、生体内で多くの作用をもたらすことがわかってきたのです。

ある研究では、胃のなかにグルタミン酸があると、副交感神経の活動が促進されることがわかっています。さらに、消化管(小腸粘膜)はその活動エネルギー源のひとつとして、グルタミン酸を大量に消費しています。

つまり、旨味成分( グルタミン酸など)の少ない食材ばかり食べていると、腸のエネルギーが不足し、腸の運動が停滞してしまいかねないのです。

旨味成分の多いもの、つまり日本人が従来食べていた出汁の利いた食事を多くとることは消化管運動の克進、つまり腸の健康には不可欠だったのです。

このグルタミン酸は、日本人の食生活に欠かせない大豆食品(納豆、豆腐、味噌、しよう油)のみならず、地中海型食生活の基本食材であるトマトにも豊富に含まれています。
これらの食材を上手に活用して、グルタミン酸をしっかり摂りたいものです。

腸の蠕動運動に必須のマグネシウムは大腸ガンの予防にも

腸を動かすミネラルに、マグネシウムがあります。マグネシウムは必須ミネラルとされていますが、現代日本人の摂取量は必要量に足りていないようです。

1950年以前には、日本人は海藻などから必要量のマグネシウムを摂取していました。しかし1960年以降、食の欧米化によって食物繊維摂取量や植物性乳酸菌摂取量の減少とともに、マグネシウムの摂取量も減少していったのです。

現在、マグネシウムの必要摂取量の基準値は1日あたり370mg(男性30~49歳)とされていますが、実際には約250mgしか摂取しておらず、120mgほど不足しています。

このことが、慢性的な便秘や腸ストレスに悩む人が増えている原因のひとつにもなっていると考えられます。マグネシウムは、「体温や血圧の調節」「筋肉の緊張を媛和」「細胞エネルギーの蓄積や産生の補助」など生命の維持には欠かせないものです。

腸にとっても重要で、さまざまな刺激から腸の粘膜を守ったり、神経のはたらきを円滑にして腸ストレスを取り除いてくれる役割を担っています。2

厚生労働省研究班の報告では、マグネシウムを多く摂取する男性は大腸がんのリスクが有意に低いとされています(ただし、女性においては有意な関係が認められません)。

このように人体にとってマグネシウムは必要不可欠な栄養素である一方で、消費されやすいものでもあります。たとえば、甘いものの食べすぎや発汗、ストレスなどによっても消費されてしまいます。
マグネシウムが不足すると、便秘だけではなく、スポーツのときのけがや肉離れなどを起こしやすくなるなど、さまざまな悪影響を及ぼします。

このようにマグネシウムは、腸を動かし、病気から守ってくれる大切なミネラルなのです。便秘がひどいときに、マグネシウム製剤などを下剤として使用することもありますが、なるべくなら毎日の食事のなかで補うのがよいでしょう。

マグネシウムが多く含まれる食材には、にがりや岩塩、硬度の高いミネラルウオーター、ひじき、玄米、納豆、カキ、カツオ、ゴマ、サツマイモ、落花生、バナナなどがあります。

ただし、重度の便秘の場合は、食事だけで効果を期待するのは難しいので、こういった3Aマグネシア お腹が痛くなりにくいマグネシウム便秘薬も活用する必要があるでしょう。

アルコールと腸の関係

アルコールを飲みすぎると肝臓に悪い。ここまではよく知られています。しかし、それだけでなく、腸をはじめとした消化器にもさまざまな悪影響を及ぼします。

さらに、アルコールは、口腔がんや舌がん、咽頭がん、食道がんのリスクを高めてしまうことがわかっています。濃度の高いアルコールの刺激によって、これらの部位の粘膜が傷つけられるために引き起こされるもので、これらはアルコール関連がんと呼ばれています。

アルコールは肝臓で代謝されてアセトアルデヒドになり、最終的に解毒され、水と炭酸ガスになります。このアセトアルデヒドが内臓を刺激したり、細胞を傷つけたりすることで、がんの発生リスクを高めるとも考えられています。

大腸がんについても、同様の理由から、発症リスクを高めていると考えられます。近年の疫学研究によれば、そのほとんどにおいて、アルコールは大腸がんの促進因子と結論づけています。

男性の場合、1日平均1合以上のお酒を飲む人は、お酒を飲まない人に比べて大腸がんの発生率が高いという結果でした。また、ビールなどアルコール度数の比較的低いものでも、大量に飲むと直腸に炎症が起き、これが引き金となり直腸がんになりやすくなるというデータもあります。
お酒は百薬の長といわれたりもしますが、量が過ぎればただの毒です。量に注意して楽しみたいものです。

潰瘍性大腸炎になりやすい食べ物

潰瘍性大腸炎やクローン病等の炎症性腸疾患の患者さんに「発病の5年前にどのような食生活を送っていたか」についてアンケートを行ったものです(2001年)。

それによると、パンやチーズ、肉類、ハム・ソーセージなどの加工食品とともに、バターやマーガリンなどの油を多く摂っていたことがわかりました。

こうした欧米型の食事を多く摂っている人は、そうでない人に比べると、なんと1.71倍の確率で潰瘍性大腸炎になりやすいというのです。

さらに、食間や食後についつい食べたくなるチョコレートやキャラメル、スナック菓子、ケーキ、アイスクリームなどの甘いものについても同様のアンケートをしています。

すると、これらの甘いものをよく食べる人は、そうでない人に比べて、1.2倍の確率で潰瘍性大腸炎になりやすいという結果でした。
一方で、野菜や果物をたくさん食べる人は潰瘍性大腸炎を発症しにくい、という結果も。以上の調査からは、潰瘍性大腸炎は、肉類に偏った食生活が原因の生活習慣病と考えられるのです。

腸は肉を好まない

日本人の胃腸は、肉食には不向きです。古来、穀物を主に摂取してきた日本人の腸のメカニズムや、酵素の違いなどが関連しているためです。しかし、どうやら肉は、日本人だけでなく、欧米人の腸にとっても喜ばしい食べ物ではないこともわかりました。

そして、非常にショッキングな研究結果があります。それは、赤身肉(牛肉、豚肉が対象。鶏肉は除く)は大腸がんのリスクを確実に上げるとされ、大腸がんの最大の危険因子のひとつだというのです。

さらに日本国内でも同様の報告があります。国立がん研究センターが約10年間で約8万人を対象にした追跡調査の結果を2011 1年に公表したのですが、肉を食べる多くの日本人は大腸がんになるリスクが高いことを明らかにしたのです。

それによれば、男性は肉類全体の摂取量が最も多いグループ(1日あたり約100g以上)の大腸がんの発症リスクが、最も少ないグループ(同約35g未満) の1.4倍。

女性でも赤身肉(牛と豚肉)の摂取量が最大のグループ(同約80g以上)が、最小のグループ(同約25g未満) の約1.48倍にもなるというのです。この調査によって、冒頭のアメリカがん研究財団と世界がん研究財団による報告内容が、日本においても裏付けられたのです。

では、なぜ赤身の肉が危険なのでしょうか。これまでは脂身は控えるべきといわれてきましたが、赤身はそれほど危険視されてこなかったような気がします。その理由としていわれているのは、次のようなものです。

  • 肉を食べると、脂質を多く摂取することになる。これが、コレステロールや飽和脂肪酸などの摂取量の増大につながる。
  • 肉を焼くと焦げることもある。しつかり火が通された肉を好む人のほうが、大腸がんになりやすいという指摘がある。
  • 赤身肉はほかの部位に比べて鉄分が多い。適量の鉄分は体に必要だが、脂質が一緒の場合は話は別。脂質と鉄分の組み合わせは、がんの発症のきっかけとなる活性酸素を作りだすフェトン反応(鉄の反応)をしやすくなる。

注目すべきは3番目です。赤身肉が問題とされているのは、そこに含まれる鉄分と脂質です。赤身肉を食べ、その鉄分が腸管内を通過するときに、過酸化脂質との反応、つまりフェトン反応がより高率で起こり、活性酸素が発生しゃすくなるのです。

人体内の鉄分の多くは、通常はヘム鉄として血液中に存在しています。酸素を細胞に運ぶ赤血球のヘモグロビンは、ヘム鉄とたんばく質が合体したもの。鉄分はこのように人間の体には欠かせない成分です。しかし、過剰な摂取は、活性酸素による発がんをうながす鉄イオンによるフェトン反応につながってしまうのです。

結論としては、赤身肉の摂取量はできるだけ抑えるべきだという意見もありますが、私は1週間に1~2回程度、少しだけ食べるぐらいならあまり問題はないと考えています。

ちなみに、アメリカでは1日の摂取量を80g以下にするようにすすめられていますが、アメリカ人の主食は肉であるといっても過言ではないので、魚や豆類などからたんばく質を摂っている日本人は、もっと少ない基準がいいかもしれません。

鉄分は赤身肉のほかにも、たとえばレバーやアサリ、ハマグリなどの貝類にも多く含まれています。赤身肉以外でも、肉や魚で赤みが強いほど一般に鉄分が多いと考えてよいでしょう。

一方、野菜に含まれている鉄分は、問題ありません。肉や魚、レバーなどの動物性食品に含まれるヘム鉄は、体内への吸収率が20 ~30 %であるのに対して、野菜や大豆食品などの植物性食品に含まれる鉄分は、非ヘム鉄であり、しかも吸収率は5%程度にすぎません。
つまり、鉄分を多く含む野菜を食べても、鉄分による活性酸素が発生する心配はないといえるのです。
ほうれん草などは、ゆですぎないようにして卵などと一緒に食べるのがおすすめです。

免疫ストレスを取り去る食べ方のまとめ

  • β-グルカン豊富に含む大麦やキノコ類を摂るようにする。
  • 刺身などの生魚や生卵に含まれるグルタミンを意識して摂る。
  • グルタミン酸が豊富に含まれた、出汁の利いた料理を食べるようにする。
  • ひじきや大豆製品、魚介類など、マグネシウムが含まれた食品を摂る。

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