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低体温を取り去る食べ方

低体温ストレス

低体温ストレス


低体温については、免疫力を低下させてしまうということで紹介していますが、体を温めて、腸を動かすのに最適なメニューがあります。それは、もはや国民食として定着しているカレーです。

本格カレーの腸を温める効果

カレーライスを食べたあとには、ジワッと汗をかき、体はて全体が火照るような感覚になったことがあるはずです。それはカレーに含まれるシナモンやジンジャーなど300種類以上が入っているとされるスパイスによるものです。

このスパイス効果について、興味深い研究があります。日本薬科大学による、本物のカレーと、比較のために作られた疑似カレーを、冷え症の女性に食べてもらい、体表温度や深部温度を測定した実験です。

なお、本物のカレーには、シナモン、ジンジャーなどのスパイスがたっぷり入っています。その結果、疑似カレーでは一時的な体温上昇は見られるものの、食後しばらくすると体温は元に戻ってしまいました。

一方、本物のカレーを食べたグループでは、90分後も体温が上昇し続けたことが確認されています。この実験からもシナモンやジンジャーなどのスパイスが豊富なカレーは、体を温めるには持ってこいの食事だといえるのです。

では、どのようなスパイスが温め効果をもたらすのでしょうか。カレーに含まれる主なスパイスといえば、ターメリックです。一般的にカレーの黄色は、このターメリックによるものです。

カレー粉の約40%がこのターメリックによるスパイスだそうです。生薬ではウコンとしても知られており、抗菌作用、健胃作用、代謝克進、血行促進作用などがあります。ウコンの効能、効果についてはこちら。

ここ最近の研究ではがん予防に対する報告もあるほどです。また、動物実験ではありますが、ターメリックの色素成分であるクルクミンに、腫瘍の増殖を抑える効果が認められています。ほかにも、シナモンやジンジャー、カルダモン、クミン、コリアンダー、クローブ、チリペッパーなど、体にいい効能を持つスパイスが豊富に含まれています。

このように、カレーはさまざまな効果が期待できるスパイスの宝庫です。市販のカレー粉やカレールウにも含まれていますが、スパイスから手作りしたほうがたくさん摂取できます。たまには本格カレーを作ってみてもいいかもしれません。そうすれば、腸を長時間温めてくれる、おいしくて、より健康にいいカレーができあがります。
カレーが心筋梗塞の予防にというのもかなり興味深いです。
カレーを週に何回か食べれば、腸のためにも心臓のためにもよさそうです。

シナモンジンジャーの温め効果

さきほどのカレーのスパイスの中にシナモンやジンジャーが温め効果があるということで紹介しましたが、こおn2つを合わせて飲んでしまおうというものです。
「シナモン(桂皮)」と「ジンジャー(生姜)」は、古くから漢方製剤として使用される素材でもあります。
材です。
シナモンの主成分は、ケイヒアルデヒドには、血流を増加させる作用があり、末梢血管を拡張させる作用が確認されています。つまり血管を拡張して血行をよくする作用が期待できるのです。

ジンジャーは、ショショウガ科の草木で、有効部分は根茎です。マウスによる実験では、ジンジャーの辛味成分のうち「6-ショウガオール」や「10-1ショウガオール」という物質に、体温の降下を抑制する効果が認められています。「6-ショウガオール」は、生の生姜にも含まれています。

ジンジャーは、西洋でも、胃腸への薬効が高いハーブとして古くから愛用されており、消化管のはたらきを整え、胃腸にたまったガスを排出させる作用もあります。

このシナモンとジンジャーがともに使用されている漢方製剤に、「桂枝加芍薬湯」と薬があります。この桂枝加芍薬湯は、芍薬やシナモンを主成分に、ジンジャー、甘草などから構成されます。

桂枝加芍薬湯は、体が冷えやすい人や、胃が弱い人に有効とされる薬で、お腹の張りが強かったり、痛みがある人に処方されます。桂枝加芍薬湯についてはこちら。

とくに虚証といって、冷感を伴う人に向く漢方薬で、軽い便秘や、便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群の治療薬としても処方されてきました。

こうした薬効をから気軽に日々の食事に取り入れやすい「シナモン・ジンジャー・ティー」です。市販のシナモンの粉末とジンジャー、適量のオリゴ糖をカップに入れ、お湯を注ぐだけの簡単なものです。

実際にどれくらい温め効果があるのかが重要ですが、どちらも飲んですぐは、体温上昇が認められました。しかし、時間の経過とともに差が出てきました。

シナモンとジンジャーには体温上昇作用があるというよりは、温かいお湯によって一時的に上昇した体温の低下を防ぐ作用、つまり体温保持作用があることがわかりました。
温かいシナモン・ジンジャー・ティーによって、体温を上昇させ、少しでも長い間、体を温めておくことは、腸を温めて、動かすのにとても有効です。

エキストラバージンオリーブオイルのみにある高い保湿力

腸の保温効果においてエキストラバージンオリーブオイルはすぐれた効果があります。東日本大震災時に、震災後、急激な環境の変化によるストレスで便秘になったり、トイレ不足が原因の便秘など、さまざまな腸のトラブルが多数起きました。
それに関して、日常生活や日常品を用いて解決できることはないかと多くの人が考えました。

当時は、季節的にもまだ寒く、お腹が冷えてしまうことも問題になっていました。阪神淡路大震災のときには、被災者の約40% が、被災後に便秘になったそうです。やはりこのときも1月の寒い時期でしたので、お腹の冷えの影響は大きかったのでしょう。

お腹の冷えを解消するには、直接温かいものを飲むことが有効です。たとえば、白湯です。寒い時期に白湯を飲むだけでいくらか体が温まります。

しかも水分を摂取することで便秘の解消にも効果があるでしょう。しかし、これだけではなかなか排便促進に至りません。

そこで、排便促進効果を持つエキストラバージンオリーブオイルを摂るように考えました。オイルそのものだけでは、その味に抵抗を感じる人もいるようなので、たとえば、災害避難時だったこともあり、手に入りやすく調理も簡単なカレー味のカップ麺に、エキストラバージンオリーブオイルを入れて摂取してもらいました。

カレーにオリーブオイル? と思う方もいるかもしれませんが、とてもおいしいのです。しかも、お腹の温かい感覚が、ただのカップ麺よりも長い時間持続するように感じられたのです。

次のような実験があります。80度の白湯180mlを300mlのビーカーに入れたものと、80度のお湯に小さじ1杯(約5ml)のエキストラバージンオリーブオイルを入れたビーカーとで、時間経過とともに低下する温度の差を比べてみました。すると、50分後になんと7.4度の温度差が生じたのです。
それは想像以上のものでした。油なら同じように効果があるかというと、そんなこともなく、同時にサラダ油との比較もしましたが、エキストラバージンオリーブオイルのほうが高い保温力があることがわかりました。

その秘密は「油膜」にあります。サラダ油などに比べて、エキストラバージンオリーブオイルの油膜は均一に薄く広がった状態が保たれるために、すぐれた保温効果を発揮するのだろうと考えられます。

就寝前ならオリーブココアがおすすめ

このオリーブオイルの保温力をさらに高め、腸を温め、動かすための飲み物として考案したのが、「オリーブ・ココア」です。これは、オリーブオイルとココア、オリゴ糖にお湯を加えたもので、おいしく飲めて、冷えと停滞腸(便秘)にとても有効な飲み物です。

冬の寒い季節にはとくに、体を温めるだけでなく、腸のはたらきをよくしてくれるので、おすすめです。オリーブ・ココア300ml とただのココア300mlとで、飲用後の体温を比較試験してみたところ、多くのケースで、オリーブ・ココアのほうが体温保持効果が高いという結果が出ました。

さらに、2 時間後の値で0.2度以上の体温上昇が見られた7例のうち、男性1例を除く6例の女性は、いずれも冷え症で、体型はどちらかというとやせ型、食後に下腹部がふくらむ胃下垂タイプの人だったことです。

また、1例の男性の場合も、冷え症ではないものの、どちらかというとやせ型でした。ここからわかることは、やせ型で冷え症の女性にとくに効果があるということ。そして、女性はおおむね胃下垂の人が多いことから、胃下垂傾向の人に効果的である、ということです。

空腹時にオリーブ・ココアを飲めば、当然オリーブ・ココアのみが胃のなかにたまります。その際、油膜ができるので、ココアが冷めにくくなることが推測され、ココアの熱が徐々に体に移行し、体温が上昇したものと考えられます。

普通のココアでは、油膜ができずにすぐに冷めてしまうため、体温の上昇が続くまでには至らなかったのでしょう。さらに、オリーブ・ココアには、腸にうれしい効果もあります。ココアには食物繊維が含まれていること、さらに甘味料としてオリゴ糖を使用しているので、善玉菌であるビフィズス菌を増加させる効果、またオリゴ糖そのものの排便促進効果が期待できることです。

また、オリーブオイルに含まれるオレイン酸の小腸刺激作用による排便促進効果などが加わるので、冬のお腹が冷えた停滞腸や、冷えによる便秘の悪化に対して、まさにうってつけの飲み物だといえるでしょう。先のシナモン・ジンジャー・ティーはシャキッとする午前に、オリーブ・ココアは午後や寝る前などにおすすめです。

砂糖は使わずに善玉菌を増やすオリゴ糖を摂る

オリゴ糖は、腸内環境をよくしてくれるので、ぜひとも日常的に摂取したいものだからです。オリゴ糖は、単糖(炭水化物を分解したときに、これ以上分解できない最小単位)が2~20個結びついたもので、砂糖の主成分となっている糖や麦芽糖など、小腸で吸収されやすく、エネルギー源となるものも含みますが、人間の消化酵素では消化されない成分も含まれています。

これらは分解されることなく大腸まで到達し、善玉菌の代表であるビフィズス菌のエサとなります。つまり、オリゴ糖は、腸内の善玉菌を増やし、腸内の環境をよくしてくれるのです。

市販されているオリゴ糖には、乳果オリゴ糖や大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
ヨーグルトに混ぜるとオリゴ糖はとてもおいしいです。

オリゴ糖が多く含まれる食材には、ネギやタマネギ、キャベツ、ゴボウ、納豆などが挙げられます。また、バナナやリンゴなどの果物にも豊富に含まれていますので、毎朝、果物を食べたり、ジュースなどにして飲むことで簡単に摂取できます。

摂取の目安は1日に3~5g ですが、前記のような食材を通して日常的に摂っているので、ふだんのメニューに、果物や豆乳などを追加するだけで、無理なく必要量を摂ることができるはずです。

低体温ストレスを取り去るには
  • スパイス、野菜たっぷりのカレーを食べる。
  • 温かい食材にエキストラバージンオリーブオイルルをティースプーン1杯程度かけることで、腸の保温効果がより高くなる。
  • 朝は、ナモン・ジンジャー・ティー、夜はオリーブ・ココアを飲む。

酸化ストレスを取り去るための食べ方

酸化ストレス

酸化ストレス


酸化ストレスについては大量の活性酸素が腸内をサビさせてしまうということを紹介しましたが、活性酸素を取り去るための食べ方を意識することが大切です。

日常の生活で活性酸素が発生することは避けられません。活性酸素は、細菌やウィルスを殺すという免疫機能に欠かせないプラスの作用もありますが、過剰な活性酸素は体をサビつかせ、悪影響を与えてしまいます。

そのため、人体には活性酸素を消去する抗酸化システムが装備されています。このシステムにおいて、重要な役割をはたしてくれるのがファイトケミカルのなかの抗酸化物質です。

ファイトケミカルは、ギリシャ語で植物を意味するファイトと、英語で化学を意味するケミカルからなる言葉です。つまり、この物質は植物に含まれる化学成分の総称です。
この物質は、動物のようには動けない植物が、紫外線や雨、外敵などから身を守るために作りだした天然成分で、その約90%は野菜や果物など、人が日常的に食べている食品に含まれています。その種類はなんと約1500種類ほどともいわれています。

たとえば、ファイトケミカルが豊富に含まれている植物や野菜は、強い雨にさらされても簡単には腐りません。また、動物に食べられないために、独特な臭いや苦味の成分を持っているものもあります。ファイトケミカルは、植物だけが作れる成分であり、人間や動物が作りだせるものではないこと。

さらに、これまでの栄養学では定義することができない7番目(その他は、5大栄養素である炭水化物、たんばく質、脂質、ビタミン、ミネラルと、食物繊維の6つ)の栄養素である、という2点に特徴があります。ファイトケミカルは、以下のように6種類に大別できます。

  1. ポリフェノール
    植物の色素や灰汁の成分などで、抗酸化力が強い。エキストラバージンオリーブオイルのオレウロペイン、赤ワインのレスベラトロールなど。
  2. 含硫化合物(硫黄化合物)
    ニンニクやタマネギなどの香りのもとで、ブロッコリーや白菜などのアブラナ科の野菜のイソチアネート類、ワサビやカラシのアリルイソチアネート、ニンニクやネギなどのシステインスルホキシド類などがある。
  3. 脂質関連物質
    人参のβカロテン、トマトやスイカのリコピン、ホウレンソウのルチン、ミカンのβ-クリプトキサンチンなどがある。
  4. アミノ酸関連物質
    アスパラガスのグルタチオンなど。
  5. 香気成分
    バナナなどの香気成分であるオイゲノール、柑橘類のリモネンなど。
  6. 糖質関連物質
    キノコ、大麦のβ-グルカン、海藻のフコダイン、リンゴのペクチンなどがある

さらに、ファイトケミカルを含む食品を効能別に見ると、以下のように分類されます。

  1. 抗酸化作用を持つもの
    エキストラバージンオイル、赤ワイン、赤じそ、クランベリー、緑茶、トマト、スイカ、タマネギ、ニンニクなど。
  2. 発がん物質を抑制するもの
    ブロッコリー、キャベツ、白菜(以上アブラナ科の野菜)、ワサビ、カラシ、マスタード、ニンニク、ネギ、大豆、スイカ、トマト、キノコ類など。
  3. 免疫力を高めるもの
    キャベツ、ニンニク、ネギ類、クランベリー、キノコ類、バナナ、ニンジン、海藻類、白菜など。

ファイトケミカルが多く含まれる果物にはそのほかに、キウイ、グレープフルーツ、マンゴー、ブドウ、オレンジ、リンゴ、スイカ、モモ、ナシなどがあります。
これらの食材とはたらきを覚えておき、腸を酸化ストレスから守るためにも、毎日の食卓に意識して取り入れたいものです。

エキストラバージンオイルの強力な抗酸化作用

抗酸化物質を含む食品のなかでも、その強い抗酸化作用で注目を浴びているのがエキストラバージンオイルです。がん細胞は人間の体内で毎日のように発生しています。しかし、免疫システムが通常通りはたらいていれば、その増殖は抑えられます。この免疫力を維持するためにも、抗酸化物質は重要なはたらきをするのです。

というのも、免疫システムは、体内環境が整っていないと十分に力を発揮することができません。免疫力を強くするためのポイントは、免疫細胞がはたらきやすいように、活性酸素が少ない環境を整備してあげることなのです。

エキストラバージンオリーブオイルには、抗酸化作用を持つ物質が4種類(ポリフェノール、ビタミンE、葉緑素、オレイン酸) も含まれています。ほかにも、オリーブオイルは細胞膜を丈夫に保つはたらきがあることも動物実験で確認されています。

人間の体は60兆個ともいわれる細胞で構成されています。それらの細胞を構成する細胞膜に障害が起こると、それがきっかけで、がん発生のリスクにもなってしまいかねません。

このように、オリーブオイルの効果は細胞膜レベルでも明らかになりつつあります。最近の動物実験では、サラダ油などに含まれるリノール酸を食べさせたマウスでは大腸がんの発生頻度が高くなり、オリーブオイルに多く含まれるオレイン酸を食べさせたマウスではこうした傾向が見られなかったということがわかっています。エキストラバージンオイルは、抗酸化作用ばかりではなく、大腸がんを予防する可能性を秘めているといえるでしょう。

発がんへのきっかけを抑制

がんと食事の因果関係が初めてわかったのは、1975年に実施された世界各国の調査がきっかけでした。それによって、動物性脂肪の摂取量が多いほど、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどになりやすいことが判明したのです。

逆に野菜などがガンを防ぐ効果は現代でもよく耳にします。

などが代表的です。

理由のひとつは、動物性脂肪には主に飽和脂肪酸が多く含まれていること。飽和脂肪酸とは常温で固まる性質があるため、体内に入ると、血液の粘度を高めて流れにくくしてしまいます。

そのうえ中性脂肪や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の合成を促し、これらが血管壁に入り込みやすくします。この物質がマクロファージなどの免疫細胞の受容体であるTLR4に結合して、炎症を起こすことがわかっており、この炎症によってがんの進行が促進されると考えられるのです。

一方、青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸) は、常温では固まりにくいうえ、TLR4に飽和脂肪酸が結合するのをブロックして炎症が起こるのを抑制してくれます。つまり青魚の脂であるDHA、EPAなどは、炎症を抑えて、がんの成長を抑制するはたらきが期待できるのです。
さらに血液もさらさらにします。
血栓の予防にEPA・DHA

体内のコレステロールのうち、食品から摂取されるのは20~30%前後で、残りの70~80%は動物性脂肪から肝臓で合成されたものです。体内で作られるコレステロールは1 日平均約l~2 g ほどで、それと同程度の量が体外に排出されています。

そのうち約3分の1は胆汁酸であり、しかもこの胆汁酸は、腸内細菌によって二次胆汁酸に変化します。この二次胆汁酸こそが、実は発がんの原因物質と見られており、とくに大腸がんへの影響が強く疑われているのです。

動物性脂肪を多く摂取すると、それだけ多くのコレステロールが作られ、腸内に大量の二次胆汁酸が発生してしまうことになるわけです。

また、この二次胆汁酸自身が活性酸素を発生させ、がん遺伝子に突然変異を起こして、発がんに結びつくことも、最近になってわかってきました。

オリーブオイルに含まれる多種類の抗酸化物質には、これらの発がんへの反応を抑制するはたらきが期待できます。事実、オリーブオイルや魚、野菜、果物を多く摂取する地中海型食生活を送るギリシャでは、ほかの地域に比べて大腸がんや乳がんの羅漢率が低かったという調査結果もあります。

1960年代、アメリカの医師らの研究では、脂肪摂取量が低い値であった日本では大腸がん(結腸ガン)の死亡率は低く、脂肪摂取量の多かったアメリカなどの北米では、大腸がんの死亡率は高かったと指摘されています。

しかし、アメリカなどと同程度の脂肪摂取量であったイタリアでは、大腸がんの死亡率は低かったのです。このことは、アメリカに比べてEエキストラバージンオリーブオイルの摂聖里が多く、肉類や乳製品などへの動物性脂肪の摂取量が少ない、つまり脂肪の摂取内容の差によるものだと示唆されるのです。

ガン予防に効果的なカルシウム

カルシウムは、骨の材料になるだけではありません。2007年の世界がん研究基金/米国がん研究所の「食品・栄養・身体活動とがん予防」と題された報告書には、がんのリスクを低下させる物質としてカルシウムが、ほぼ確実に効果がある栄養素として挙げられていました。

なぜ、カルシウムが大腸がんに効果があるのか。脂肪を摂取すると胆汁の分泌量が増えます。胆汁に含まれる胆汁酸が酸化した二次胆汁酸は、大腸がんの引き金になりやすいことがわかっています。まだ実験段階ですが、カルシウムにはこの胆汁酸を吸着し、便中に排出するはたらきがあることがわかってきました。

1990年代に発表された海外の疫学的研究においても、食事やサプリメントでのカルシウム摂取量の多い人は、大腸がんの発症リスクが抑えられると結論づけられています。

とくにカルシウム摂取量が多いグループの大腸がんになるリスクは、最も少ないグループに比べて2%も低いという結果でした。カルシウムを多く含む食品は、体への吸収率がいい順に、牛乳や乳製品、豆類、ダイコンの菓や春菊、小松菜などの線の野菜、海藻やエビ・小魚類などがあります。

酸化ストレスを取り去る食べ方
  • ファイトケミカルを含む野菜・果物をたくさん食べる。
  • エキストラバージンオリーブオイルを日常的に摂取する。
  • カルシウムを意識して摂るようにする。

免疫ストレス「急増するガン、アレルギー症状との関連も」

免疫力

免疫力


便秘の症状に困り果てたAさんは、生活をよくよく振り返ってみると、便秘だけでなくほかにもさまざまな症状に悩まされていました。若い頃はテニスやスキーなどスポーツが得意で体力が自慢だでした。

しかし、スポーツから遠ざかって10年以上経過した30代後半なった頃から、疲れが取れにくく風邪を引いても治りにくいなど、体力の低下が気になり始めたそうです。

便秘の症状が出始めたのも、ちょうどその頃と重なります。介護の仕事に就いているAさんは、仕事場での過労やストレスがそれらの原因ではないかと考えていました。

しかし、問題はどうもそれだけではないようなのです。たとえば、食事はきちんと1日3食を摂るよう心がけていたそうですが、実際にはその時間帯はまちまちで、昼食が夕方頃になったり、夕食を摂るのが深夜になることもしばしばで、ときには忙しさのあまり昼食を抜いてしまうこともあったそうです。

そのため、その内容もおのずとインスタント食品などが多く、自炊はごくまれだったとのこと。しかも、便秘がひどくなってからは、肌荒れも気になるようになり、それがまたストレスになるという悪いスパイラルにはまってしまったようです。

Aさんの不調の原因はいったいどこにあるのでしょうか?

これまで見てきたように、私たちの健康と腸内環境は、とても深く結びついています。そのひとつの要因が、腸の免疫機能にあります。
腸管には体内で最大の免疫器官があります。そして、この腸内の免疫と腸内細菌には密接な関係があることがわかっているのです。
腸には、約500種類、100兆個の細菌がすみついています。それら腸内細菌は、乳酸菌に代表される「善玉菌」と有害な「悪玉菌」、さらに腸内の環境によっては、そのいずれにもなりうる「日和見菌」を加えて3種類に分類できます。

腸管の内側、腸壁に無数にあるひだのなかに群生するこれらの細菌のうち、善玉菌は食べ物の消化・吸収の促進、ビタミン合成、腸管運動の促進だけでなく、腸内を酸性にして、痛原菌をやっつけたり、免疫力を高めてくれたりもします。乳酸菌やビフィズス菌などはその代表です。

一方、ウェウルシュ菌やブドウ球菌、大腸菌などに代表される悪玉菌は、腸内をアルカリ性にし、腸内の腐敗を引き起こし、発がん物質や毒素のある有害物質を生み出します。
体の抵抗力を弱め、下痢や便秘の原因にもなります。腸内ではこれら善玉菌と悪玉菌が絶えず勢力争いをしており、ちょっとしたバランスの変化によって、一気に変わってしまいます。

たとえば、食事内容や睡眠、ストレスや健康/状態などが、腸内細菌のバランスに大きな影響を与えているのです。実はこの腸内細菌のバランスが、免疫システムにとても重要です。近年、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状に関して、腸内細菌との関わりが指摘されています。
花粉症はは腸を整えて根治する

アレルギー症状は、現代人にはおなじみですが、免疫機能の過剰反応によるものです。近年の研究によれば、アレルギー患者とそうではない健康な人では、腸内細菌叢(さまざまな腸内細菌が集まった状態) に違いがあることが指摘されています。

善玉菌をサポートする細菌群の多い人はアレルギー疾患にかかりにくい傾向がある、という報告もあるほど。アレルギー疾患のある人の腸内細菌叢の異常は、花粉症などアレルギー症状が発症する以前から認められることから、腸内細菌叢の異常と、アレルギーの発症には何らかの関係があると考えられています。

このように、腸内細菌のバランスは、免疫システムにおいて重要な位置を占めている、と考えられるのです。

欠食・偏食ストレス」でも紹介していますが、1日1食など食事量を極端に減らしてしまうと、その分、体重は減るかもしれませんが、それに伴って筋肉量も落ちてしまいます。この筋肉量の減少もまた、「免疫ストレス」を増大させることになるのです。

免疫を担う細胞やリンパ球などの栄養分になつているのが、アミノ酸の一種である「グルタミン」。実はこのグルタミンは筋肉から供給されているからです。
そのため、食事の量を極端に減らすと、それに伴ってたんばく質の摂取量が減り、筋肉量も減少するので、いざというときにグルタミンの供給量が不足してしまうことになります。その結果、リンパ球がうまくはたらかずに免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなるなどの悪影響が心配されます。

Aさんが気になっていた疲れや、風邪が治りにくいなどの症状は、グルタミン不足による免疫力の低下が原因ではないかと考えられるのです。食事の大切さは健康を害したときにしか自覚できませんが、これを機に食事の大切さを理解してほしいと思います。いいかげな食習慣=腸ストレスなのです。